報告:講演会~ケアってなあに~
過日ご案内いたしましたように、東京老人ホームを始め、当NPOを含めて、不思議なご縁でつながったいくつかの組織が、東京西部で緩やかな協同体「コミュニティケアをはぐくむ希望の会」を設立しました。その発足記念と、当NPO法人設立披露を兼ねた講演会が10月18日(土)吉祥寺駅そばの東急インにて開催されました。多くの方がご参集くださり、小澤竹俊先生のご講演に耳を傾け、会の活動にエールを送ってくださいました。当日の様子をご紹介します。
NPO法人緩和ケアサポートグループ設立披露の挨拶>
代表 河 正子
皆様、本日はようこそお越しくださいました。
思いがけない経過で皆様とこの時間をともにできることになりました。ご参加くださった皆様と、準備のためにお力をくださった皆様に心から感謝いたします。
さて、NPO法人緩和ケアサポートグループの紹介を短くさせていただきます。本日の会を共催している5つの組織のなかで、もっとも歴史の浅い、つい2ヶ月ほど前に誕生しましたのが、私どものグループです。今日の会が初めての対外的活動となります。そこでこのように設立披露の時間をいただいた次第です。
名前にある「緩和ケア」とは何かといいますと、自分や家族の病や老いを経験するとき、死をはじめとするいろいろな課題に向き合い、戸惑いや困難を感じるものです。そんな思いを分かち合い、辛さを和らげ、ご本人が持っておられる力を強め、支えあう仲間をつくり、望まれる生活の実現を支えようとするのが「緩和ケア」です。「緩和ケア病棟」や「ホスピス」という施設だけでなく、一般の病棟でも、福祉施設でも、在宅でも実践される必要がある働きです。
実は私は大学で看護コースを選択し、卒後就職した総合病院で、新人ナースとして初めて人の死に出会いました。当時は、最後まで延命を図ろうとして人工呼吸器を使用するなか、死は苦しいものに感じられました。おだやかな最期のケアを求め、救世軍清瀬ホスピスで勤務を始めました。そこで、人の強さと弱さ、最後まで希望となり力となる家族の大切さを学びました。亡くなってゆく方とそのご家族と、思いもよらなかった心と心の深いつながりをもつことができました。
その後、母校の大学で学生にターミナルケア、緩和ケアを伝えることになり、共に学びながら、緩和ケアに真剣に携わる多くの方に出会いました。2006年3月、大学を退職するときに、同じく大学院を卒業する教え子と、ホスピス・緩和ケア病棟のケアをもっと広く伝えなくちゃいけない、治療中であれ在宅静養中であれ、相談できずに悩んでいる方がたくさんおられる、地域で巡回相談を始めようかと話し合いました。
それが始まりで少しずつ考えをまとめ、たくさんの方々に折にかなった助けをいただいてNPO法人の設立となりました。
まず市民の皆様やケアに携わっている皆様と、顔を合わせて「緩和ケア」を考えあう活動を目指しています。セミナー、講演会、学習会を開き、やがては地域の方々の相談にのれるようにしたいと願っています。
緩和ケアをめぐる活動をとおして、よきつながりをいただいていると思います。このつながりの力を地域の方々にお伝えして、新たなケアの力をはぐくんでいけたらと願っています。
活動に関心をおもちいただけましたら、幸いです。皆様のご助言、ご支援を願っております。
以上で設立披露のご挨拶といたします。
ありがとうございました。
「希望の会」発足記念講演会の様子 副代表 中神百合子
2008年10月18日、ついに「NPO法人緩和ケアサポートグループ」が第一歩を踏み出しました。『病む人・老いゆく人・支える人をつなぐ希望』というタイトルのお蔭で、また前日までの悪天候が嘘のような好天に恵まれこともあり、会場の<吉祥寺東急インむさしの>には、受付開始の1時間前から人が集まり始めました。車椅子の方、杖をついた方、ご家族に手をひかれたお年寄り、耳の不自由な方たちに、各構成団体ゆかりの人とスタッフも含めて、300人におよぶ参加者でした。会場は大変なごやかな雰囲気に包まれ、13時に始まった会は、二人の手話通訳を得て順調に進行していきました。
司会者より「希望の会」発足の経緯が説明されたあと、東京老人ホーム・内海理事長の開催挨拶、後援して下さった武蔵野市高齢者課長の挨拶、各団体代表紹介に続き、河代表から前述のPCSG設立披露と小澤竹俊先生の紹介がありました。
小澤先生は終始にこやかな笑顔と平易な言葉でメイン・テーマにそった語りかけをされました。医大卒業後に山形県内の病院で救急医療などを研修したのち、ホスピス・緩和医療に携わったこと、希望の具現化のため‘めぐみ在宅クリニック’を開業、同時に‘いのちの授業’を始められたという、自己紹介を兼ねたご経験をおりまぜてのお話でした。
こうありたいという希望と現実の間のギャップが苦しみであること、その中にあって強く生きようとする力が「将来の夢」、「支えとなる関係」、「自己決定できる自由」です。この3つは「時間存在」、「関係存在」、「自律存在」に対応しますが、村田理論にもとづく人間のスピリチュアリティを構成する柱です。先生は長野県立こども病院の院内学級を舞台に編まれた詩集『電池が切れるまで』から、‘最後の治療’を朗読され、この3本柱とその上に形成される水平面(いわば3本足の円卓)について説明されました。どれか一つの柱が朽ちかけても、他の柱を頑強なものにすれば円卓を安定にできることを、‘ある銀行員の話’を引いて示して下さいました。支えは一人一人異なること、苦しみと向き合う辛さはホスピス・スタッフも同じで、<誰かの支えになろうとする人こそ一番支えを必要としている>と強調されました[私たちPCSGのメンバーも例外ではありませんね]。ホスピスは綺麗事ばかりではないけれど、病いをえて弱っていく人・老いてゆく人・死にゆく人から突きつけられる困難な諸問題、それを前に弱く無力な自分であっても、逃げないで最期までその人と向き合う力が真の力であると結ばれました。二つの夢-先生の話を聞いた若い人が苦しんでいる人のために働く時がくること、どんな病気でも、どこにいても、安心して最期を迎えられること-を話されて講演は盛んな拍手の中で終わりました。
その後、質問の時間がもたれました。身内の介護を例に、在宅ケアでと思ったがどうしたら良いか解らなかった、痛みをとって欲しいが緩和ケアの存在も知らず悔いが残った、情報を得る手段がないなど、私たちの使命を問い直させるような質問に身がひきしまる思いでした。講演会終了後も、会場のあちこちで、自然発生的に参加者同士の交流の輪が出来ていたことに驚かされ、今後の協働体活動に文字通り‘希望’を見いだした次第です。
おしらせ
PCSGのホームページができました
PCSG理事の小山さんが主催する「人間科学(死生学)研究会」のメンバー
小館さんが専門家を紹介くださり、ホームページが開設されました。
NPO法人「緩和ケアサポートグループ」のホームページはこちらをクリックしてください !
http://www.ac.auone-net.jp/~pcsg/
「希望の会」第1回研修会の予定
日時:12月7日(日)午後2時~4時
場所:武蔵野公会堂第3会議室にて
定員:30名(先着順)
内容:「在宅ホスピスについて」
武蔵野ホームケアクリニック院長の東郷清児先生がお話くださいます。
後記:
初めてのレターをお届けいたします。
皆様の応援で少しずつ歩み始めました。感謝です!
北風が吹き、秋から冬へ時が流れます。
どうぞお身体大切にお過ごし下さい。(K)